峠を一人、車を走らせていた


久しぶりにクソ寒い日で雪までちらほらと舞っている


「こんな日に限って・・・」


と一言くらい文句を言いたくなる

今日は4日間の出張が終わり、出張先から帰る日

運悪く今年は大人しかった冬将軍が押し寄せていていた


雪が降ると、幹線道路の山道は大抵溶雪機が動き出して

路上に雪を積もらせまいと水が噴出している


この水には凍結防止と融雪作用促進のための粉が混ぜられているので

車に水がかかってしまうと後でひどく汚れるのだ


「明日は洗車かな・・・」


正直な話、出張帰りの明けの一日くらいのんびりしたい

だけど、愛車が汚れまみれでは

融雪機の存在すら知らない南国の人(主に同僚や上司)に

車の管理もしないルーズな人と思われてしまうかもしれない


それは嫌だ。几帳面な人、清潔な人で会社では通っているのに

そんなことで変に思われたくない

出来れば、人並みに評価を受けて、出来れば昇給を順調に遂げたいのだ


「しょうがないな・・・」


そう思って車を飛ばすこと3時間

どうせなら高速でも使えばよかったなどと思ったが

後の祭りでなんとか我が家に着いた


見ると部屋の明かりが点いている

一人暮らし、ワンルームマンションに部屋の明かりが点いている理由はただ一つだ


予感と確信を持ちながら部屋に行くと

予想通り、彼女が帰りを待ち構えていた


「おかえり~」

「ただいま。どうした?」

「へへ、今日出張から帰るって聞いていたから。ごくろうさま。つかれた?

 でも、ちょっと遅すぎない?なにしてたの?」

「下道で帰ってたから遅くなった。正直高速使って帰ればよかったよ」


部屋の中に入ると食事が簡単ながら作られていた

これは悪いことをしたと思いながら

一言言ってくれれば高速使ったのにと心の中で八つ当たりをしてしまう


「ご飯できてるよ?食べる」


ここで食べないわけにはいかないだろう

たとえつい先ほど食事を食べてきたとしても

それがまだ知り合って半年の彼女に対する誠意と言うものだ


と、言うわけで食事を何とか終えた後(失礼)

彼女は家に帰ると言うので車で送っていくことにした


「うわっ。泥だらけ・・・どうしたの?これ」

「ちょっとな。ひどい道を帰ってきたから」


融雪機に含まれる粉が云々はこちらの人には話さないでおいた

意味がないし、説明するこちらも疲れる


「明日、洗車しようか?」

「そうだな。でも明日仕事は?」

「明日は休みだよ。何言ってるの?ほら?」


そう言ってスケジュール帳には祝日のマーク

それを見てまず思ったのが出張明けの休みを損したなだった


「じゃあ、また明日」


彼女を家まで送り届けて、帰路につきながら

なんとなく我が愛車の状態を再認識する


彼女も少し引いていたようだし

やはり、体裁を考えれば・・・・


「明日は洗車だな」


多分、二人で・・・