ランドセルと靴袋をもって学校へ出かけた


「わすれものはない?」

「うん」


久しぶりの通学路には少し雪が残っている

今の気温は5度

冬にしては暖かい


歩きなれた道は朝早くにも関わらずちらほらと人の影が見えた

皆、早足でバスや電車に向かうのだろう


歩いている最中、路肩の藪の中でウサギを見つけた

多分、近くにある幼稚園の飼育小屋からまた逃げ出したんだろうなと思った


「うさうさ。こいこい。ちっちっちっ」


なんとなくウサギを呼んでみるけど何の反応も無い

興味がなさそうにウサギは再び藪の中へ


その時、雪解けで木に積もっていた雪が落ちてきた


ドサ


見事にウサギはその雪の下敷きになってしまった


たすけようか?


それを見てふとそう思ったのは気まぐれ

学校が始まるまでまだ時間があるし、助けるくらい訳がない


長靴の半分くらいを雪に埋没させながら藪に入っていくと

少しだけ盛り上がった雪の塊がもそもそ動いた


中から必死なウサギが飛び出してきた

毛の先まで濡れてとても寒そうだった


「寒いの?」


手を出して抱え挙げようとしたら

ウサギは驚いたように飛びのいて

文字通り脱皮のごとく逃げ出していく


その鮮やかな逃げっぷりが少し面白かった


「なにやってるの?」


声がして振り返ると友達のユキちゃんがいた


「うん。ウサギがいたんだ」

「え~、また逃げ出したんだ。もう、柵くらいちゃんと作ればいいのに

 しょうがないな~。後で園長先生に言ってこよう」

「うん。それがいいね」

「それより、ああ~、びしょぬれじゃない。今から学校だよ」


見ると、雪解けの水で程よく制服が濡れている


「う~・・・寒い」

「もう、しょうがないな~。マフラー貸したげる」


首に巻いたユキちゃんのマフラーは暖かい


「行こうか」

「うん」


今日から学校が始まる