暁が広がる高高度の空の中で私は考えていた
何のために生きているのかを
もうこの世界には幸福と呼べるもののほとんどが何も無いというのに・・・
赤い戦闘用のロボット『ナイチンゲール』はスラスターを吹かせ
一筋のきらめきを天空に残し疾走する
その速度はすでに音速の3倍を超え、衝撃波での機体の軋みが耳を打つようになっていた
機器は負荷の許容限界値を超えていることを示す赤いランプを点灯させている
「だから、なんだっていうんだろう?」
例え、このまま機体がバラバラになって私が空の藻屑と消えたとしても
誰が一体それを悲しんでくれるのだろうか?
ただ、有能な駒が一つ無駄死にしたと思われるだけなのだろうか?
私はそんなくだらない存在なのだろうか?
多分そうなのだろう。その程度の価値しかすでに私には無い
では、何故だろう?どうして、こうなってしまったのだろう?
生きていて、産まれてきて、母と、父の愛を知った
それが何になるかは知らない
知らないけれど、よかったと思えるようになった
意味なんて無くていい。ただあるだけでいい
だけど、何もかもをなくしてしまった私はなんで?
なんで、私だけがまだ生きていて、そして、こんなことをしているの?
生きていたいから。望んでいるから。そうしたいと思っているから。
<何を?>
「分かるか。馬鹿」
ただ、今は死にたくないと思った。
無意味だろうと、有意味だろうと、今は死にたくないと思った
この先、何年、何十年生きることになったとしても
それだけは変わらないんだろう
『目標到達まで後3分』
私は、戦士だ。だから、今日も生きる。
だけど・・・
それに意味なんて無いんだろうなと思うと少しだけ涙が出てくるようだった。