大森さんちの桜君は変わった人だ


特になにをするわけでもないのに道端でぼーっとしている

雨の日はさすがに家にいるみたいだけど

晴れの日は大体どこかで何かをしている


だから、ある日の土手で桜君を見つけたとき尋ねてみた


「ねえ、大森君。なにやってるの?」

「えっと・・・指を見てるの」

「指を見てる?自分の?」

「うん。どうして、指は指なんだろう?」


私はよく分からないと言う桜君のことがよく分からなかった

だけど、なんとなく気になる存在になった


<指か~・・・>


別の日、また桜君が工場の空き地でぼーっとしているのを見つけた

私はまた桜君に話しかけた


「ねえ、大森君。今度は何をしているの?」

「ああ、松林さん。こんにちわ」

「うん。こんにちわ。大森君はいつもいつも外で何かしてるよね」

「うん。外は面白いことが多いから」

「この前の指の話も?」

「指?」

「うん。指」

「綺麗だと思ったんだ。太陽も草も川もなんかいっぱいいっぱい。

 松林さんも時々そう思う?」

「私は・・・」


どうなんだろう?別に気にしたことが無かった


「だから、今は工場を見てるの」


確かにこの空き地に隣接する工場を桜君は見ているようだった

それは夕日に照らし出されて綺麗に見えなくも無い


「あの辺りの何かはなにがいいんだろう?

 僕はそれが分からないんだ。」


桜君はやっぱりわけが分からない


桜君としばらく話してから月日が流れた

今も桜君のことはよく分からない


なにがしたいの?あなたは?

どうして、いつもそうなの?

正直、あなたの突飛な話にはついていけません


「いってきます」

「いってらっしゃい」


だから、もう少し桜君の研究を続けます。